鉄則1:規制の中身は「倍率」ではなく「証拠金の割合」
レバレッジ25倍という数字は、条文にそのまま書かれているわけではありません。金融商品取引業等に関する内閣府令(以下、金商業等府令)が業者に禁じているのは、個人顧客を相手方とするFX取引において「取引の額(想定元本)の4%以上の証拠金の預託を受けず当該顧客にFX取引を行わせること」です。4%の裏返しが25倍にあたります。
たとえば1米ドル=100円00銭で1万米ドルを新規に買う場合、取引の額(想定元本)は100円00銭×1万=100万円。必要証拠金額はその4%で4万円になります。金融先物取引業協会が示すこの計算例が、規制のすべての出発点です。
協会の表記は「4%以上」であって「4%ちょうど」ではありません。各社が5%や10%を必要証拠金率として設定することは規制の範囲内です。25倍は上限であり、標準値ではないという読み方になります。
鉄則2:「個人」の定義は資産額ではなく自然人かどうか
規制の対象は、個人顧客を相手方とするFX取引を含む通貨関連デリバティブ取引です。ここでいう個人について、協会は「通常考えられる自然人としての個人(特定投資家を含みます。)」と定義しています。特定投資家に移行してもレバレッジ規制からは抜けられません。
例外はひとつだけです。金融商品取引法第2条に規定する定義に関する内閣府令(定義府令)第10条第1項第24号ロ(1)の要件に該当する業務執行組合員等として取引を行う場合の、その業務執行組合員等が除かれます。その要件は「直近日における(中略)出資対象事業により業務執行組合員等として当該個人が保有する有価証券の残高が十億円以上であること」。組合契約・匿名組合契約・有限責任事業組合契約が前提なので、通常の個人口座は該当しません。
| 論点 | 取扱い |
|---|---|
| 特定投資家である個人 | 対象に含まれる(4%以上・25倍上限のまま) |
| 有価証券残高10億円以上の業務執行組合員等 | 対象から除かれる |
| 店頭FX | 対象 |
| 取引所FX | 対象 |
| 通貨オプションの売り | 対象(顧客がオプションを売る立場となる取引に限る) |
| 既存ポジションの決済取引 | 適用されない |
| 法人顧客の店頭FX | 別の規制体系(週次で見直される想定元本規制) |
鉄則3:4%は「新規建玉時」と「1日1回以上」の2か所で見られる
証拠金の確認は常時ではありません。金商業等府令の改正で禁止行為に追加されたのは次の2点で、条文上の位置は第117条第1項第27号と第28号です。
- 新規取引時:実預託額が約定時必要預託額に不足しているのに、契約締結後ただちに不足額を預託させることなく契約を継続する行為(第27号)
- 証拠金率判定時刻:営業日ごとの一定の時刻に実預託額が維持必要預託額に不足しているのに、速やかに不足額を預託させることなく取引を継続する行為(第28号)
証拠金率判定時刻は、ニューヨーク・クローズなど業者の判断で定められ、顧客ごとに設定することも認められています。ただし少なくとも1営業日に1回以上とされ、業者が恣意的に変更せず継続して適用することが条件になっています。
実預託額の計算にも決まりがあります。証拠金の額に評価益を加え、評価損を減じた額。この評価損益にはスワップポイント(通貨間の金利差調整額)の分も入ります。すでに確定した未払手数料については、実預託額から控除されると定められました。
鉄則4:不足が出たら、相場が戻っても充当は必要
判定時刻に不足が生じた後の扱いは、協会の解説に具体例つきで書かれています。1米ドル=100円00銭で1万米ドルの買いを持ち、判定時刻が毎営業日午前7時というケースです。
- 必要証拠金額は100万円×4%=4万円
- 判定時刻(Xとします)に1米ドル=99円00銭なら、(99円00銭−100円00銭)×1万=▲1万円が不足額
- 充当期限(Yとします)までに1米ドル=101円00銭へ好転して評価益が出ていても、X時点で計算された1万円の充当は必要
- Yの時点でさらに円高が進み98円00銭になっていても、Yで求められるのはXで計算した1万円まで
「評価損の回復を待つといった運用は適当ではない」と協会は明記しています。いったん認識された不足額は、追加入金か既存取引の一部決済、または全部決済で解消する決まりです。
証拠金率判定は1営業日1回以上と定められていますが、これはロスカット判定を1日1回にしてよいという意味ではありません。協会は、ロスカット取引は判定時刻と関係なく、価格変動リスクや流動性リスク等を勘案した水準と判定間隔で実行することを求めています。
ロスカットの水準そのものは会社ごとに異なります。制度で守られる範囲はFX会社が破綻したら預けた証拠金はどうなる?で整理しました。
鉄則5:25倍になったのは2011年8月1日から
この規制には経過措置がありました。施行は2010年8月1日で、施行後1年間の必要証拠金率は2%。つまり2010年8月1日から1年間の上限は50倍で、2011年8月1日以降に上限が25倍となりました。
背景として協会が挙げているのは、2007年から2008年頃にかけての高レバレッジ化です。顧客保護、業者のリスク管理、過当投機の防止という3つの観点に加え、当時は内外の金利差が縮小しており一層の高レバレッジ化が危惧されたことが理由に挙げられています。区分管理方法の信託への一本化、ロスカット・ルールの整備・遵守の義務化と同じ流れで導入されました。
自分の口座の必要証拠金率を確かめる
4%は下限です。実際に適用される必要証拠金率と証拠金率判定時刻は、各社の契約締結前交付書面(取引説明書)と取引ルールのページに書かれています。定額証拠金方式を採る会社もあるため、倍率ではなく金額で確認すると取り違えません。
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特定投資家に移行するとレバレッジ25倍の上限は外れますか?
証拠金は取引額の何%必要ですか?
証拠金率判定時刻とは何ですか?
レバレッジ規制は取引所FXにも適用されますか?
倍率ではなく金額で管理する
レバレッジ25倍という表現は、必要証拠金率4%を言い換えたものにすぎません。区分がプロに変わっても、自然人である限りこの割合は動かない。動くのは、各社が4%より高い率を設定するかどうかと、判定時刻をいつに置くかの2点だけです。
出発点となる条文と解説は個人顧客を相手方とするFX取引に係る証拠金規制|金融先物取引業協会にまとまっています。取引の基礎から確認する場合はFXとは?初心者が知っておくべき外国為替取引の基本と始め方、税務の扱いはFXの利益は20万円超で確定申告?で扱っています。
